こうして俺が固唾を飲んで様子を窺っていると、 「ほにゃ!? 貴様、妾が視えるのか?」  唐突に狐が獣とは思えぬ若々しい女のような声をあげた。表情豊かに目を見開きながら、明らかに驚いた様子で俺を見ながら。  俺は強張っていた全身の筋肉が一斉に緩み脱力する。狐の仕草も然ることながら、間の抜けた擬音語と緊張感の無い口調によるところが大きかった去皺紋方法。 「ふにょ!? もしや声も……」  狐は俺の反応に更なる驚愕を見せる―――が、すぐに「いや待て、この場に居る時点でそれは当然と考えるべきか……」などと小声で漏らしながら考え込んでしまった。  

その後暫く、狐は『人払い』がどうとかと、俺には訳の分からないような独り言をぶつくさと口にして、うんうん唸っていた。  この間にそっと逃げだそうか、とも考えたが、それはそれで後味が悪そうだったのでやめておく。俺とて物心ついた時から怪しげなものを見続けてきた身。その辺の経験はそれなりに豊富だ。だから経験から知っているのである 。妖怪と呼ばれる者達が、必ずしも人に有害であるとは限らない事を。妖怪の中にも友好的に接してくれる奴はいるし、俺なんかを慕ってくれるような変わり者だって過去にはいた。
妖怪とて千差万別、悪い奴も居れば、良い奴も 居る。気の合う奴も居れば、どう頑張っても相容れない奴もいる。人付き合いと一緒だ。学校で遭遇した一つ目妖怪は明らかに俺とは反りが合わない有害な奴だったが、この狐にはそれ程それを感じない。まあ正確には先程の狐の 間の抜けた仕草がそうさせたと言うべきだがSmarTone 上網。  ともあれ、そんな相手に無断で逃げ出す様な真似は些か気が引けるというものだ。  そこで俺は、多少逡巡した部分もあったが「……あの~」と狐に声を掛けてみることにした。 「おっと、失敬。つい考え事を。……で、なんじゃ?」  相変わらず緊張感のない口調で答える狐。
妙な親近感を覚えながら、それでも俺は慎重に言葉を選びながらおっかなびっくり訊ねる。悪意を感じられないからと言って友好的とは限らないし、互いの戦闘能力の差が埋まった訳で もないので油断は禁物だ。 「俺……いや、僕このあと所用がありますので……この辺で失礼させて頂いても……」 「所用って?」  即座に狐からそんた。
しかもそれは前のめりにその大きな顔を急接近させてきた狐の視線を一身に浴びながらだった。  当然ながら所用などと言うものはその場を逃れる為の方便であり、実際に有りはしない。よもや会って間もない相手にそんな事を訊き返されるとは思ってもみなかった俺は答える術を持たずに口籠る。  そんな俺に狐は訝しげに眼を細めながら顔を近づけると、 「解りやすい奴じゃな……」  俺は即座に謝ったね。 「ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい!」  狐の言葉がどういったものかというのは関係が無かった。俺はただ狐から発せられた言葉に脊髄反射するが如く、謝罪を連呼していた。気持ちと言うものはちょっとしたきっかけでガラリと豹変てしまう。先程の俺が良い例だ。 寸前までガクブルだったのに、狐の取った些細な行動一つで簡単に安堵してしまったのだからな。そして気持ちの移り変わりというものは、これまた先程の俺の様に好転する事もあれば、逆に悪化する事もある。狐を出し抜いてそ の場を逃れようとした事実から見ると、今置かれた俺の状況は明らかに後者の可能性が高いと思われ、所謂半ばやけくその謝罪、怒り出す前に謝り倒そうとした訳であるdermes 投訴